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  • 執筆者の写真森のオフィス 富士見

ignite!2022 第二回が開催されました!



2022年5月13日(金)富士見森のオフィスにて、「ignite!2022」Day2が開催されました。今回も参加者34名(内1名リモート参加)全員が集結。Day2では、「地域メンター」の中島恵理さんから「富士見町、八ヶ岳山麓里山の地域課題」について講演があり、講演後は「地域課題」、「社会課題」をキーワードとしたグループディスカッションが行われました。諏訪地域では一週間前に、氏子が一丸となり大木を里山から人力で諏訪大社まで曳行する七年に一度の諏訪大社御柱祭が執り行われたばかりでしたが、祭りの熱気にも負けない熱い議論が交わされ、また講演とディスカッションにより、参加者の富士見町の地域課題や社会課題に対する理解がより深まる回となりました。


時系列でイベントの流れを紹介します。


ファシリテーター・津田賀央によるガイダンス:


「ignite!」は「好奇心や想像力をカタチにし、アクションを起こす」をコンセプトに、自身の職種やスキル、背景にとらわれることなく、集まった人たちが自分たちの感心事や好奇心をベースにアイデアについて話し合い、一緒にプロジェクトを創っていく1年間のワークショップイベントです。

参加者の皆さんにとってのゴールは、「ignite!」を通じて生まれたアイデアを具体化・具現化させること。ワークショップとしてのゴールは、アイデアを検証し成果を発表、支援や協力を募ります。最終発表会では県内外から様々なゲストを招集予定です。

「ignite!」で重視したいことは 「なぜやるのか?(WHY?)」。この問いに対して自分なりの答えを持つこと。それが他人と一緒に何かをやる時にも大事になってきます。もう一つは、その「なぜやるのか?」が決して独りよがりにならずに、身の回りの社会環境との良質な関係性を持つことも大切です。


それでは、中島さんのトークに入る前に本日のワークタイムについて説明します。

本日のワークタイムでは、キーワードをベースに、自分の意見を同じテーブルの人に伝え、他の人たちの意見を聞くテーブル・ディスカッションを行います。キーワードは、前回議論した未来に対する自身の関心と、本日のゲストトークで出た地域の課題の2つ以上のキーワードをピックアップ。自分がどう感じたかを伝え、他の人はどう感じたかを聞き、議論してもらいます。

15分間、各テーブルで議論をし、最後にテーブル代表者が話をまとめ2分で発表してください。これを2ラウンド行います。


中島恵理さんによる 「富士見町・八ヶ岳山麓の宝・資源と課題」




富士見町・八ヶ岳山麓の宝・資源と課題について、少し主観も入ってしまいますが、なるべく客観的なデータに基づいて説明していきたいと思います。


<中島恵理さん自己紹介>

20年前に富士見町に移住し自給自足の生活をしています。この間、国や長野県で環境やSDGS推進行政に長く関わってきました。また2年間、長野県副知事として環境・福祉・農業様々関わってきました。今現在は、こどもの未来をかんがえる会代表理事、富士見まちづくりラボ代表、ほか色々な地域活動をしています。


<富士見町の特徴>

富士見町は長野県の玄関口だと思っていますが、諏訪6市町村の入り口であり、八ヶ岳観光圏(北杜市+富士見町、原村)の一員として、両方の立場をつなげてますます発信力を高めることができると思っています。

また諏訪地域の特徴として6市町村が独自路線を行っていて、争っているように感じることがあります。広域のDMOが不在であったり、八ヶ岳山麓地域のビジョンが不存在で県としても課題感を持っています。


<富士見町の人口>

現在は約14,000人ですが、人口は減少しており2050年には10,000人を切ってしまうと推定されています。更に高齢化率もどんどん上がっており、特に後期高齢者80代、90代の高齢者が増えており、これからはこういった質の違う高齢化が表面化してきています。

このようなことより、これからは80歳90歳を超えても輝き続けられる、元気でいられる為の政策が必要になってくると思います。


<年代別男女別人口移動推移>

富士見町に限らず長野県全体に言えることですが、高校を卒業して20代前半で転出する人口が多く、男性は卒業後20代後半、30代で戻ってくる人が比較的多いですが、最近はこれも減少傾向にあります。

一方で女性は一旦転出すると戻ってこないのが特徴です。私が感じるに都会では男女差別がなく、女性がその人らしい選択ができる機会が多いですが、田舎ではその機会が少ないからかもしれません。女性が暮らしやすい、活躍できる社会づくりをしていかないと、子供も増えないし、地域も活性化しないということだと思います。


<富士見町の産業>

電子部品・デバイス、農業、林業、宿泊・飲食サービス業の割合が多いのが特徴です。

一方で、労働生産性が低く(1596位/1709市町村) 1人あたりの雇用者所得も全国平均より低くなっています。


<農業、林業>

農業は盛んであるが、ほとんどの農家は年収300万円以下の小規模農家で、有休農地も東京ディズニーランド6個分位ある。農業従事者は60代以上が50%、高齢化が進んでいます。

行政の役割として、農業法人、専業農家もしっかり応援しつつ、兼業農家、自給的農家、協働農園、福祉農園など様々な農業形態も応援していくことが重要だと思います。


<土地利用の現状>

山林が41%、森林の所有形態は民有林が多いのが特徴です。規模が零細で分散している個人有林では所有者の高齢化が進み、後継者不足から整備が進んでいない状況が課題となっています。


<交通、移動>

富士見町内では、デマンド交通「すずらん号」が運行されています。土日の運行はなく、平日の本数も限られていますが、高齢者にとっては大切な足となっています。すずらん号の利用者は年々減少しており、町民アンケートでは、「公共交通の利便性の向上」、「生活道路の整備」、「歩行者や自転車が通行しやすい道路の整備」のニーズが高い結果となっています。

また町民の移動手段は自家用車利用率が圧倒的に高く、高齢者の免許返納問題や、子供たちの学校の送迎などが課題となっています。

個人的な考えではあリますが、人口が少ないところで公共交通の利便性を上げることはなかなか難しい中で、スクールバス、デマンドバス、買い物バス、観光バス、福祉バスなどバラバラに運行しているものを連携させることで効率的に運行できるようになると思っています。


<地球温暖化対策>

富士見町の温室効果ガス排出量は運輸部門、家庭部門が多くなっています。理由は、自動車の利用率が高く、寒い場所なので暖房器具の利用が多いことと思われます。

再生可能エネルギーを増やすことは重要ですが、一方で、森林伐採型メガソーラーが富士見町外の企業により建設されることで、お金が地域外へ流出し、森林伐採、環境破壊が問題にもなっております。ゼロカーボンと環境保護の両立が課題となっています。


<地元住民と移住者との間の課題>

地域に住んで20年間生活してきた中で、私が見えてきた課題として地元住民からすると、「区に入らない、区の活動に参加しない移住者に対する不満」、「自分たちが大事にしていた里山が知らない間に移住者の住宅になっていることに対する不満」、「環境問題が重要だというが、実際の里山を維持管理しているのは地元の私たちである」など複雑な気持ちを聞いたことがあります。一方で、移住者の方は「地区の出払い等区の仕組みを知らずに移住し、移住相談の時には何の説明も無かった」、「地元に入りたいがなかなか入れない、住む場所によっては区に入れない」などの気持ちがあり、一つの課題は、地元の住民と移住者がどうやって融合してお互いを理解して協調していかれるかを考えるのが重要だと思います。


<行政の限界と市民の可能性>

行政だからこそできることもたくさんありますが、行政でできないこともあります。

今回の「ignite!」も民間の皆さんのアイデアでイノベーションを起こすことですが、市民だからこそできることがあります。特に地域の課題は複雑でなるべく総合的に解決してく必要があるが、行政の場合は縦割りで考えがちなのに対し、市民の立場であれば横櫛で考えることができます。また富士見町内の境界にとらわれず、自由なエリア設定が可能となり、知恵も技術もパートナーもエリアにとらわれない、広域連携が可能になります。ぜひ「ignite!」だからできることがたくさんあると思うので期待しています。

Q&Aタイム


Q:いろんな交通を束ねる案は良いと思うが実際に実現可能なのか?

A:なかなか難しい問題ですが、国土交通省でも少しずつ規制緩和が始まっています。例えば、長野県川上村ではスクールバスが路線バスとして利用されている。一つの車を複数目的で使用できる可能性は増えています。それをどう組み合わせるか、貨客混載もできるようになってきている。NPOで有償運送もタクシー運行が無い地域という限定がありますが、条件が合えばできるようになってきています。


Q:有休農地で環境保全地域になっていて行政上で常に草刈りをしなければならず負担になっていることを聞いている。解決策として何か具体的な動きはあるのでしょうか。

A:私の個人的なアイデアですが、草刈りの技術を身に着けたい人のための楽しいワークショップなどが考えられます。実際に山梨県増富村では、開墾ワークショップということやっていて、大変な作業を楽しみながらやることで新しい出会いや交流が生まれています。どうすれば行政に頼らず市民の知恵でできるか考えてほしいです。


Q:田舎は何か新しいことをやろうとしても直ぐに反対される。この地域で新しいことをやるには保守的な高齢者の理解が得られないとできないがどうすれば良いでしょうか。

A:どんどん動き出すことではないでしょうか。年配の方は保守的な人が多いですが、実際に話してみると新しいことやりたいという気持ちを持った人もいます。地域の高齢者の方は特に移住者に対しての抵抗が強い印象はあるが、地域に入って、高齢者の声に耳を傾けることで、理解を得られることもできるのではないでしょうか。


Q:人口が減ってきているのを、増やしていくのは難しいが、関係人口を増やす施策は何かあるか。

A:関係人口を増やす取り組みは色々なレベルで行われています。私もずっと別荘の人たちと田んぼを一緒にやって、そのうち定住している人も増えてきています。継続的な関係性を持って人と人とが繋がり、個人ベースで信頼関係ができることで移住するきっかけにもなるのではないでしょうか。


テーブルディスカッション/ 発表


中島さんの講演のあとは、いよいよワーキングタイム。


1テーブル4名~5名で8チームに分かれ、15分間のディスカッションを行い、各チーム代表者が2分間で発表、席替えし、違うメンバーで2ラウンド行いました。




合計16チームの発表では、「森林(アカマツ、カラマツ)の活用」、「高齢化・人手不足」、「人口減少」などのキーワードを複数チームが取り上げており、共通の課題感を持っていることも多かったようにも思います。また、その解決手段としてのアイデア提案もありました。

森林活用では、「そもそも地元の人でも森林のことを良く知らないのではないか、地元の小中学生に体験林業を行い、森林を知ることから始めたらどうか?」。

農業の人手不足問題では、「草刈りイベントで農業体験と地域の人の交流の場をパッケージにし、観光の中に取り入れる」など、“体験”に着目した意見がありました。

また高齢化問題では、「高齢者が若い人を支える、モチベーションが高い高齢者ができることを提供していく、これからは年齢で切ることはなく、精神的なモチベーションで切り、できることを循環させていく。」。

人口減少問題では、「居場所作りや人と人との緩い繋がりが心の充実、安心感を作る。」、「田舎には自然そのものが遊び場である、自然のなかでの遊びを知っている高齢者から子どもたちに遊びを教えてもらう、そのポジティブな体験が大人になった時に思い出し、もう一度田舎に帰ってくる動機になる。」、「地域連携で人を呼ぶ、人口そのものを増やすのは難しいが、都心と富士見町を移動する人を増やす、それを経済にする。」といった提案がありました。





最後に、津田さんより次回の「ignite!」について説明。


Day1では吉田さんより「インサイト」の考えを学び、10年後の未来を想像してもらいました。本日Day2では、中島さんより「富士見町の地域課題」について説明があり、それをキーワードに議論してもらいました。次回Day3ではもう少し自分の抱いていることをアイデアに変換する作業を行いたいと思います。

未来に対してのビジョンを言語化、どんな未来にしたいか、その未来の為にどんなことをしたいか、を考え、ワークシートに書いてもらいます。そのワークシートをもとに1対2で話をし、何のためにやりたいのか、誰のためにやりたいのか、人からの意見を聞きアイデアをブラッシュアップしていきます。


本日のDay2も多いに盛り上がり、終了時間を過ぎても中々お開きになりませんでした…笑


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